今日は非常に非常に楽しい1日でした!
まずは朝10時に東大理学部1号館の広報室へ。
東京大学大学院理学系研究科有志 科学コミュニケーション活動グループ「0to1」の定例会に行ってきました。
3月24日に行われた東大総長賞授賞式で、理学部長の山形俊男先生が僕のプレゼン、そして懇親会での挨拶の言葉に感動して下さり、懇親会の場で夢に満ちあふれた話をして下さり、理学部で科学コミュニケーションに非常に力を入れていらっしゃる横山広美先生をご紹介して下さったのが僕と0to1とを結びつけるきっかけとなりました。
横山先生のお名前は、東京大学科学技術インタープリター養成プログラム経由で数年前から存じていたのですが、お会いするのは今日が初めてでした。
一方の0to1も2007年のサイエンスアゴラで存在は知っていて、ほんの少しだけアゴラの会場でメンバーの方とお話しした記憶があるのですが、しっかりお話しするのは今日が初めてでした。
0to1は、科学コミュニケーションに関心のある理学部を中心とした学生からなる団体で、横山先生がスーパーバイザーを務められています。
午前中の定例会では、僕を含めた初参加の人々のために活動紹介から始まり、新しいプロジェクトの提案など、活発に議論していました。それぞれの想いが強く話が発散してしまいそうな場面も何度かありましたが、リーダー的な数人が上手くまとめていたりしていて感心しました。
で、お昼からは僕のランチセミナー。僕は0to1でセミナーをする人として今回招待して頂いたわけです。
総長賞授賞式で行ったプレゼンは持ち時間がたった4分しかなかったため、本来40分くらいあるプレゼンをほとんど削除して4分にしていたのですが、今日は時間もたくさんあるので、本来の40分のスライドにさらにいくつか付け足したスライドを持っていきました。
1時間くらいで終わると思っていたのですが、次から次に質問が出てきて盛り上がり、
気付いたら合計3時間も(!!)かかってしまいました。
ランチセミナーのつもりがいつのまにか「おやつセミナー」にまで延長してしまいました。笑。
日本の教育システムの批判や、僕なりの夢・理想なども語らせて頂いたのですが、概ね横山先生を始めとして皆さん賛同して下さり、近い将来大きな原動力になってくれればと本気で思いました。
横山先生が今日仰っていた
「本当に有望な人材であれば大学はその人のために無理矢理でもポストを用意して離さないようにするものですよ。」
と言う言葉がとても印象的でした。
僕もそうやって、大学側が絶対に手放したくなくなるような人材になりたいですね。前にも書いたように、僕は論文で業績を上げたわけでもないし、研究に直接貢献したわけでもないですが、それでも学術分野の日本最高峰である東京大学から必要とされるような存在になれればと思います。
僕のセミナーを聞くために、わざわざ会社を抜けて来て下さった方や、Skypeで参加して下さった方もいらっしゃり、今日の出会いを大切にしたいと思います。
0to1のあとすぐ、同じ理学部1号館にて今度は総長会の集まり。
総長会、と言うのは歴代総長賞受賞者で構成される会で、まぁ右を見ても左を見ても神様みたいな強者ばかりの凄い会であります。
4時から6時くらいまでは、「超弦理論とゲージ理論の双対性における可積分性の研究」で平成19年度総長賞を受賞された岡村圭祐さんによるセミナー。
受賞内容に関する話をされると言うことで、絶対に理解出来ないものだと思っていたのですが、話のどの部分をとっても、岡村さんがいかに物理を愛しているかがひしひしと伝わってくる、それはそれは素晴らしいセミナーで、10次元の概念とか、超弦理論の概念がちょっとだけわかったような気がしました。全く眠くならない、物理をほとんど全く知らない僕が聞いても引き込まれるカリスマ性がありました。
小学校のときから岡村さんのような先生が理科を教えてくれたら、世の中は理科好きの少年少女で溢れるのではないかと本気で思いました。
セミナーのあとは場所を移動して懇親会。僕が最も好きなタイプの懇親会で、お互いの経験や目標・理想などを熱く語りあい、あっという間に時間が過ぎていきました。大学1年から僕はこういう懇親会・飲み会がしたかったのです。表面的な話しかしない新歓コンパや、酒を飲むだけの飲み会には全く興味が湧きません。
懇親会では「プレゼンの上手さ」が話題の1つになりました。
3月の総長賞授賞式では、超新星爆発の研究で受賞された田中雅臣さんのプレゼンが無茶苦茶わかりやすく且つ面白く、お互いにプレゼン技術を誉め合ったりしていたのですが、彼も僕と同じ考え方で、プレゼン中は必ずユーモア、笑いを取る部分を予め仕込んだり、壇上から離れて身振り手振りをふんだんに用いることを心掛けているそうです。
僕は国際学会と言うものには行ったことが無い人間なのですが、壇上に止まってマイクの前で棒立ちしてつまらないプレゼンをするのは日本人くらいだそうで、他の国の人々は身体の動きが凄いそうです。
スティーブ・ジョブスやビル・ゲイツは学者ではありませんが、彼らのプレゼンはいつでも動きに満ちあふれていますよね。僕はそれがスタンダードになるべきだと思います。
もう一つ、プレゼンで大切なことは、聴衆のレベルに応じて内容を変えること。同業者同士であれば徹底的に専門用語を用いて専門的な会話をすればよいですが、一般人や、専門でない人たちを前に話をするときは、いちいち正確性にこだわったり、完璧に理解させようとするのは全く無意味です。
誤解を招く説明をすることは避けなければいけませんが、大雑把な概念として興味を持ってもらい、「わかったような気」にさせて、支持をえることが何より大切です。
「こんな言葉遣いは学術的に正確でない!」とか「かみ砕いて話をするのは私のポリシーに反する!」とか主張している研究者ははっきり言って二流です。独りよがりとでも言いましょうか。自分がまだ何もわからない子どもだったときのことを常に考える、その視点がとても大切です。
僕は中学2年生のときに見たNHK驚異の小宇宙人体で、遺伝子やDNAの素晴らしさを「わかったような気」になり、Scientific Visualizationの分野に足を踏み入れました。
今日発表された岡村圭祐さんも、小学生のときにNHKアインシュタインロマンを見て物理の世界に興味を持たれたとのことでした。
「一般向けにプレゼンをするときには徹底的にエンターテイナーになるべし。」
とは今日の岡村さんの言葉ですが、全くその通りです。「面白い!」と感じてもらうことが大切で、別に医学や物理の本質まで理解してもらう必要は全くありません。相対性理論を一般人が理解する必要なんて全くありません。でも、「あ、相対性理論って実はとっても面白いかも!」と、こちらを振り向かせることは極めて重要で、しかも子どものときにそのような経験をすれば、科学に興味のある一般人が多く生まれ、そのような人たちの子どももまた、お父さん、お母さんの影響もあって科学に興味を持ってくれる。そう言う正の循環が出来ればよいのですが、アインシュタインロマンも驚異の小宇宙人体ももはや過去の栄光となってしまったのが日本の悲しい現状です。
驚異の小宇宙人体は、徹底的に取材し、CGも何年もかけてこだわって作り、わけのわからない芸人などは一切起用しないで真面目路線を貫いたにもかかわらず、視聴率は20%を超えたときもありました。
徹底的に学術の世界にこだわって番組を作れば、科学とはほぼ無縁の一般人だって興味を持って見るのに、そのような骨太な番組にはもう長いこと出会えていません。僕ら若手が結束して、素晴らしいコンテンツを作れれば良いのですが…
最後に、今日総長会のみんなで撮った写真をば。この写真に写っている人たちのほとんどが、将来超大物になることは間違いないでしょう。今すぐに出はなくても、彼ら彼女らと共同で大きな研究などが出来る日を心から待ち望んでいます。
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「サイエンスを、正しく、楽しく。」
を合言葉に活動している瀬尾拡史によるブログです。
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