SIGGRAPH ASIA 2015で英語講演してきた。

11月2日~5日まで、神戸国際展示場、及び神戸国際会議場にて行われたSIGGRAPH ASIA 2015にて、1時間の英語講演をさせて頂きました!

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いやはや、人生何がどうなるのか本当にわからないもので、僕は3DCG大好きとか言っておきながら2006年にデジタルハリウッドで3DCG習い始めるまでSIGGRAPHという単語すら知らなかったような人なのですが、そして最初のほうはSIGGRAPHというのは超格好良い3DCG映像の上映をやっているところらしい、みたいな大胆過ぎる誤解をしていたわけですが、そんな自分が今年8月にLos Angelesで開催されたSIGGRAPHに初参加、しかも日本からの唯一のElectronic Theater入選且つBEST VISUALIZATION OR SIMULATIONという部門世界一の賞の受賞代表者として参加したと思ったら、その数か月後に今度はSIGGRAPH ASIAにも初参加、しかもいきなり60分の英語ソロ講演で、Technical Papersでの1人の持ち時間より全然長いではないか!という、2015年は色々と規格外のことが頻発しております。

“Symposium On Visualization In High Performance Computing”の責任者でいらっしゃった小山田耕二先生から直接お声掛け頂いて、今回の英語講演の機会を頂きました。

最初は確か30分の講演という話だったように記憶しているのですが、いつの間にか1時間に増えているー!

というわけで、CGや可視化のプロの方々の前で、Computer ScienceもComputer Graphicsも専門的な教育は1秒も受けたことがない自分が、それも英語で1時間丸ごと講演をするというのはだいぶ不安だったのですが、講演本番は何故か頭がいつも以上にフル回転し、英語も途中で行き詰ることなく終わることが出来ました。

そしてACM SIGGRAPHの公式Twitterからアットツイートされるという、個人的には歴史的大事件が発生致しましたw

今回の講演で個人的に一番嬉しかったのは、質疑応答の時間で日本人ではない方とのやりとりをある程度こなせたこと。

その質問の中に、”What is the next for you?”という「うぉーーーーーー!」という感じの質問があってだいぶびびった。そしてだいぶキザな回答をしてしまったw

裏ではCG-ARTS協会関連の講演があったり、メイン企画でMITの石井先生や東大教授になられたばかりの稲見先生や落合くんらのシンポジウムもあったので、お客さん5人くらいだろうと思っていたのだけれども40人以上いらして下さってとても良かったです◎

もう1つ、今回SIGGRAPH ASIAに参加して嬉しかったことは、自分の講演の前日の夜に公式のレセプションがあったわけなのですが、まだ講演もしていない段階なのにわざわざ話しかけてきてくださったはじめましての方が複数いらっしゃって、3年前に東大病院での初期研修終ったときにはCG研究関係の知り合いはほとんどいなくて右も左も分からない状態だったことを考えると非常に感慨深いものがありました。

偉い先生方と知り合えるのも嬉しいですが、ほぼ同世代や学部学生くらいのCG研究関係の人たちと知り合えると非常に嬉しいものがあります。彼らよりも全然CG技術のことを知らないのが辛いですが…。

SIGGRAPH ASIAでの英語発表を無事に終えることが出来て、もっとinternationalに、worldwideに情報発信やら講演やらやっていきたいなぁとちょっと思いました。まぁ、その前に発信できるだけの成果物が無ければ元も子もないのですが。今後数年間の目標にしようかなぁと。

最後に、講演に招待して頂いておきながらアレですが、SIGGRAPH ASIAに参加してみて感じたちょいネガティブな意見も含む率直な感想を書き記しておきます。

・個室トイレの「大」「小」「おしり」とかが書かれているあれが、神戸国際会議場って言ってるのに全部日本語表記しか無くて、「大」「小」に至っては同じ大きさの小さいボタンしかないやつで、そんな外国の方にとって超bad UIのものを「国際」展示場で採用したらいかんでしょう。いや冗談じゃなくマジで。

・思っていたよりも遥かに規模が小さかった。本家の7割くらいなのかなぁ、と思っていたらもっと全然小規模だった。

・メインホールのイベント待ちの行列が何とすぐに外に並ばなければいけない状態で、だいぶ寒かった。あれ、風邪ひきます。

・Computer Animation Festival、グロいのが多かった。あと前衛的?って言うのだろうか、わかりにくいのが多かった。そして実写合成が半分以上あった気がした。流行りなんですかねぇ。本家と雰囲気が違い過ぎて、それから、「これぞCG!うぉぉぉぉぉー!」っていうのがあんまり無かった気がした。映像作品としては素晴らしいけれども、ん、これSIGGRAPH向き…なの、か?と個人的にはそう思った。

・レセプションパーティーで、全然食事にありつけなかった。本家は会場の広さも参加人数も何倍もだったけれども、ほとんど並ぶことなく何でも食べることが出来た。

・自分も偉そうなことは言えないけれども、伝われば良いとは言いつつも、さすがにbroken English過ぎませんか、って思ってしまう日本の(偉い)人も複数。これは8月のSIGGRAPH本家で実感したのですが、英語がネイティブでない国は日本以外にもたくさんありますが、その方々の発表は、確かに国特有の「訛り」みたいなのはあったけれども文法が崩れまくっている、と思ったことは無かった気がしている。

・日本での開催だからと言って国際学会でいくつか「日本語講演」があるとか、時代を逆行しすぎているのではないかと。外国の方たちが来なくなっちゃうのでは…。だってそうでしょう。例えば僕らがヨーロッパの国際学会に行って面白そうな講演タイトルを見つけて部屋に入ってみたら全部ドイツ語だったりしたらとても残念じゃないですか。それと同じ。まぁ、そもそもタイトルも英語じゃなければ読めないから関係ない、と開き直ることも出来なくはないけれども。

・初めてライゾマのパフォーマンスを見た。ドローン(確か)24台と女性3人が躍るやつ。ドローン制御とか門外漢なので全くわかりませんが、実装した人良く頑張りましたねっていうのが正直な感想。コンピュータ上で高々24個の点を動かしてもまぁよっぽどモーションが神がかっていない限り面白くもなんともないと思いますが、その動きをドローンという実体にマッピングして、音楽と同期させて、人間も同期させると素敵なコンテンツになるのだなぁ、と。CGの立方体1つだけでもディズニーがモーションを付けると本当に生きているように見える魅力的なCG映像になるのと似ているかな。でもこれ流行り廃りがあるのではとも思った。ドローン複数台の飛行音を大音量の音楽でかき消す、という力技も。

・ライブ感が命の複数人のシンポジウムだとなかなか難しいですが、英語ソロ講演の場合、2, 3回だけでも予め練習しておくと、我ながら見違えるほど変わる。特に、練習中にふと頭の中によぎった、上手く英語に出来ない日本語表現を事前に調べることが出来ると語彙力もつくし表現力も上がって楽しい。

・Pixarの新作短編アニメーション、やっぱり今回も凄かった。

・Exhibitionで医療×3Dみたいな展示をしているところがあったのだけれども、例によって心臓3Dがメチャクチャだった。右心房右心室中隔みたいな心臓断面の3Dがあった。そんなとこに中隔ないし。

・やっぱり話しかける人より話しかけられる人になりたい。

SIGGRAPHに関わるのが2015年が最初で最後でした、という残念なことにならないようにしたいですね。

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おまけ:

SIGGRAPH ASIAが開催されていた神戸国際会議場で11/7, 8は日本臨床スポーツ医学会という学会が開かれていたらしいのですが、7日の朝近くを歩いていたら東大病院での初期研修時代の同期だった整形外科医に遭遇するという奇跡。狭い…狭すぎる…。


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愛知県立時習館高校1年生の質問に答えてみた。

今年も10月19日(月)に愛知県立時習館高校で高校1年生全員に対して講演をしてきた。
今年「も」というのは、昨年、一昨年に引き続き、実はもう3年連続で講演しているから。地図を見ずに時習館高校に辿り着けるまでに至った。

そんなに何年も同じ人の話で良いのだろうか、とも思いつつ「生徒たちにとても好評だったのでぜひ今年も…」と言われるととても嬉しい。

そして、毎年講演当日の感想文を送って頂けるのがさらに嬉しくて、しかも高校1年生が一生懸命書いた手書きのお手紙付きとなると嬉しいを超えてもはや感動になる。

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ちょうど出張直前に郵便が届いて、飛行機の中で読んでいたのだけれども、感想一覧の最後に生徒からの質問が添えられていたので、ネット環境が通じない飛行機の中で回答書いてみました。

熟慮してから書いてしまうと、文章だけはだいぶ格好良い感じになってしまったりするものなので、質問読んでその場で思い浮かんだことをそのまま書き起こしました。

特に時習館高校の1年生に特化した回答でもなく、同じような質問受けることがこれからもありそうだなぁ、と思ったので、以下質問と回答とを貼り付けておきます。

何かご参考になれば。

◆起業した動機や、社長としての責任について。
自分がやりたいこと、つまり、サイエンス、特に医学にCGを活用することで世の中を少しでも良くすることを実現するための手段が起業しかないと思ったから。
大学の研究室で適切なところはたぶん無いし、既存の企業で自分のビジョンと同じことをやっているところもたぶん無い。だから、自分でやることにした。
「起業マジ格好良いよね!」とか「社長とか響きが良いよね!」とか「これしてあれすれば何年後には上場できるかも!」みたいなことは1mmも思いませんでした。いまも思っていません。
社長としての責任ですが、自分より規模の大きな会社や自分よりも偉い人が、超小規模且つ若い会社に仕事を出そうなんて普通は思わないはずなので、頂けた仕事には全力で取り組みます(その結果が、相手が満足するものに仕上がっているかどうかはまた別の話なのだけれども)。
会社が大きくなれば、会社の成長をまず第一に考える責任があるかと思いますが、小規模の場合には、もちろん会社は成長させなければいけませんが、それよりも、1つ1つの仕事をしっかりやることが大事だと思っています。

◆チャンスがあったときにどのようにしてそれをつかむのか?
iPS細胞研究所から頂いたお仕事で作った「iPS MASTER」という学習ゲームアプリがあるのですが、そのときのエピソードを少し。
このアプリでイラストのほとんどを描いてくれた方と、アプリ全体のストーリーの骨格を作ってくれた方は、どちらも僕の講演を過去に聞きに来てくれて、講演後に話しかけてくれた方なのですが、2人とも単に熱意を話してくれただけではなくて、今までに自分が作った作品を持って来てくれたり、いま実際に自分が手を動かしてやっていることを話してくれたりして、そのことをとてもよく覚えていたこともあって、「iPS MASTER」のお話を頂いたときに声をかけて、一緒にアプリ制作に携わって頂きました。
チャンスがあったときにそれを掴めるためには、日ごろからの準備が必要です。
熱意を話してくれるだけでもそれはそれで一応印象には残りますが、下手でも途中でも自分で実際にやったことがあるかないかで印象も評価もまるで違います。
何か1つでも「○○に興味があって…」の後に「自分はここまではやってみました!」と言えるものを持っておくようにすると良いと思います。

◆高校で生物を選択して後悔したとおっしゃっていましたが、その後悔はいまでもまだ後悔のままなのでしょうか。
はじめに自分の発言が適切ではなかったかもしれないのですが、生物の授業や実験はとても好きだったし、普通は大学生が研究室で行うような実験を高校生のうちに色々出来たことは今でもとても感謝しています。
ただ、振り返ってみたときに、生物の道に進むのであれば高校生のときにやらなくても大学生になったら同じ実験をするし、高校で習う生物のことは普通に分かった上で生物・医学の専門領域をさらに勉強することになるので、いずれ通る道であって、一方で物理は高校生のうちに触れておかないとなかなか接する機会も無く、物理と生物とを比較したときに物理の場合は問題を解いていくうちに理解出来てくるようなことも多いような気がとてもしていて、大学入試という、問題を解くには最適なイベントを活かさない手は無くて、その意味で、医学部行くんだったら高校のときは敢えて物理選択の方が良かったかなぁと思うことは今でも多いです。特にCG系をかじっていると物理がわからないとどうにもならないことも多くあり、いまもだいぶ辛いです。
でも、じゃあ自分が実際に物理選択だったとして、「やっぱり物理選択しておいて良かったわー」と今頃言えているかどうかは実は分からないような気もしています。
隣の芝は青い。

◆将来何をしたいというものがあっても、いまの現状とはかなりかけ離れていたときにどのように考えていけばいいでしょうか。
細かく遡って1つ1つこなしていくしかないと思います。
AをするためにはBが出来るようにならなければいけない。Bが出来るようになるためにはCが出来るようにならなければいけない…と、遡っていきましょう。
そんなのわからん!と思ったら、もし、自分が将来やりたいことを実際にやっている人がもしいるのであれば、思い切ってその人に連絡してみましょう。その人も余程の天才でもない限り、いきなり今やっていることに辿り着けたわけがなく、これまでの道のりを教えてもらいましょう。高校生から相談されて嫌がる大人は滅多にいないと思います。もし嫌がられたら、その人は目標にする人ではありません。
…と断言してしまうのは実は言い過ぎで、質問する側の本気度が見えなかったり、事前の勉強不足が明らかに分かる場合、単なる興味本位で聞いているには、質問される側も忙しいのでそんな中途半端な人を相手にする時間はありません。大人はみんなより人生経験が当然長いわけで、相手のメールをちょっと読めば、或いはちょっと話せば、その人が本気か本気ではないかは一瞬でわかります。
質問するならそこらへんちゃんとしましょうね。

◆今までの人生の最大のターニングポイントはどこですか?
まず、人生が変わっていくのは自分が全く予期していなかったことが起こったときで、それでなければ「ターニング」ポイントとはそもそも言わないですよね。
振り返ればターニングポイント(つまり、自分が全く予期していなかったことだけれども今振り返ってみると凄い経験・体験)は色々ありますが、1つどうしても挙げろと言われたら、医学部3年生のときに法医学の吉田謙一先生が僕のチューターになったことかなぁ。
自分の名字がちょっと違ったら、或いは一浪ではなく現役で東大に入学していたら、吉田先生がチューターになることは多分なかった。
そして吉田先生主催の最初の懇親会でCGのことを少し話してみたら、たまたまそれが2007年で、2009年から始まる裁判員制度に向けて日本中が揺れているときだった。
で、突貫工事でCG作ったら、法医学のCG作り始めて僅か2ヶ月程度でNHKの夜のニュースで全国放送されて、そこからあらゆるメディアに出るようになって、メディア露出が増えたことで自分の人生が変わっていった。

◆CG以外に今後やってみたいことはありますか?
自分にとって一番得意で好きなことがCGなので、たぶん、今後もCGは何らかの形で関わり続ける人生を送っていくことになると思います。
現実的にあり得そうなのは、PC 1台に留まるのではなく、手術器具みたいなデバイスで、キーボードやマウスではなく実際の手術器具とほぼ同じ操作でCGを制御する、とか、最終出力をCGではなく実体として出力したり。例えば3Dプリンタが一般的にはわかりやすい。でも、現状、コンピュータの中で動いているもの(例えば動いている心臓CG)をそのまま動く状態で3Dプリンタで出力することは今のところ出来ないし、そもそも僕はハードウェアの人ではないので(だからと言ってCGの人です、と言ったらそれはそれでCGの研究者の先生方やハリウッド映画レベルのCGクリエーターの方々から怒られてしまうけれども)、技術的にそのあたりの課題がクリア出来る時代になったり、少なくとも試作出来るような状況にならないとなかなか実際には難しいような気もしている。

◆好きなことを突き詰めていっただけと仰っていましたが、つらいこともたくさんあったと思います。つらくて逃げ出したいと思ったことはありますか?
ありません。
なんだろうね、一種の病気みたいな状態なのかもしれないけれども、僕はCGを自分の人生から完全に捨てたいと思ったことは一度も無い。
ただ、ちょっと質問の意図からはずれるかもしれないけれども、細かい点では自分のやりたいことは少しずつ変わっている。それを「逃げ出す」と捉えるのであれば、何度も逃げ出しているかもしれない。
昔はNHKスペシャルみたいなCGフル活用の科学番組を作りたいと思っていたけれども、シミュレーションデータを忠実に使って可視化する5分に凝縮されたフル3DCG映画の制作がとても面白かったり、いまは、「映像」という制約を捨てて、目の前の患者さんのデータを使ってその場でリアルタイム・インタラクティブに操作が出来て実際の病院の現場で本当の意味で役立つ、それでいて3DCGの強みが発揮されるようなものを作りたいと強く思うようになっている。

◆自分は何が好きなのかわからなくてとても迷っています。どのようなときに、自分はこれが好きだと実感しますか?
そんな複雑に考えるようなものではなくて、気付いたらそればっかりやっていた、とか、それやっているときが超楽しいとか、そんなもんだと思います。

全てあくまで1個人の見解なので、鵜呑みにせずに、ふーんこんな考え方もあるんですねーくらいの気持ちで捉えて頂ければ。


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