超初心者的Houdini雑感

今日は、4年前にJohns Hopkinsの短期留学の帰りに立ち寄ったTorontoでお会いした、SIDE EFFECTS SOFTWAREの多喜健一さんと、Product SpecialistであるScott Keating氏にお会いしました。

カナダでお会いした方に4年ぶりに東京で会えるなんて、嬉しいですね!

SIDE EFFECTS SOFTWAREと言えば、3DCG業界では、Houdiniと言うソフトウェアの開発元としてとても有名な会社です。

このソフトウェア自体は結構昔からあって、大学2, 3年生の頃にも名前だけは聞いたことがある記憶があります。当時は、エフェクト系に超強いらしい、くらいの知識しかなく、周りで使っている人もいなかったのですが、最近では日本でも3DCG映画キャプテンハーロックを制作したマーザ・アニメーションプラネットなどがHoudiniを導入しているなど、色々なところで耳にします。

Houdini engine for Maya, for Unityなんてのも開発中で、これからますますメジャーになっていくのだろうと思います。加えてArnold Renderや3DelightもHoudiniに対応だったはずなので、Maya, Houdini, Unity, Arnold, 3Delightの5つを覚えておけば多分最強ですw

で、Houdiniは全くの初めてだったのですが、多喜さんとScott Keating氏が、医療分野に応用出来そうな観点から説明して下さる時間を作って下さいました!

と、言うわけで、Houdiniに触れてまだ2時間くらいしか経っていない超初心者的雑感をば。

# 最近、CG会社のテクニカルディレクター(TD)っぽい書き込みも増えてきた。。。自分はどの方向に進むのやら。。。

まず、Python使ってDICOMデータを取り込める!
…って、これは厳密にはMayaでも出来るんですが、Mayaの場合、DICOMを取り込もうとすると、C++かPython APIでカスタムでテクスチャノードを作るしかなく、これが結構大変です(って言うか僕はMaya APIを扱えるだけの技量が今のところありません。習得したい…)。

これだけであれば、ふーん、と言う程度なのですが、超感動的だったのが、Volume DataとしてDICOM sequenceを取り込んで表示出来る!

これ、他のどの3DCGソフトウェアでも簡単には出来ないのです。
いやこれも厳密には、Lightwaveではプラグインが出ていたり、MayaでもFluid使えば出来ないこともないのですが。Lightwaveは使ったことがないのですが、MayaのFluidは激重で、DICOM viewerみたいにグリグリまわしたりするのは結構きつかった記憶があります。

加えて、PolygonをVolume Dataに変換して、Volume Data同士のBoolean演算が出来るとか、それだけでも十分医療の世界で使えそうな気がします。ZSphereを使いたいがためだけにZBrush導入、と言うのと似たような感覚。

ちょっと不思議だったのが、Volume Data→Polygonの変換が三角形ポリゴンではなく四角形ポリゴンだったので、marching cubeでは無い方法のようです。でも綺麗なメッシュでした。

うん、とにかくこれがHoudiniすげー!と思ったところでした。

ノードベースで色んなものを接続してGeometry作ったりParticle制御したりするみたいなのですが、これは普段からMayaでNode Editorいじったりしていれば割と短期間で覚えられそうです。ただ、Houdiniはノードの数がもの凄く多くて使いこなすには時間がかかりそうな気が…。

あとは、濃度付きVolume Dataとして取り込んだものを任意断面で切れるかとか、外部の数値ファイルの参照がどれだけ簡単かとか、そのあたりをもう少し知りたいなぁと。

超初心者がスペシャリスト2人から色んなことを教えて頂ける超豪華な機会でした。ジョージ・ルーカスにビデオカメラの録画ボタンの位置を教わるようなもんですw

なんだか最近、こういう方向も自分の目指す道の1つとしてありなのかなぁと思ってきました。医学とかサイエンスの世界で、可視化とか解析とかをするときに、解析のアルゴリズムを考える部分は僕は全く出来ないのですが、MayaとかHoudiniとかUnityとかで何が出来るのかを知った上で、このソフトのこの機能を使えば、比較的簡単にデータの可視化が出来て、且つ操作も簡単、とか、このソフトにこういう機能が加わったら、きっと診療の場でもみんな喜んで使うと思いますよ、とか、そんな道。

この前病院の先生方に、病院で使われているとある形式のデータを30行もしない簡単なPythonスクリプトを書いてMayaに取り込んでグリグリまわしたりしたらそれだけで驚かれるということがありました。意外と世の中こんなもんで、この世界とこの世界とを結びつけたらきっと素晴らしいことが出来て、結びつけるために必要な知識はそこまで専門的で無くてもよいのですが、両方の知識を持っている人が全くいないために長いこと何も起きなかった、と言うことは結構あるのかもしれません。

テクニカルディレクターの修行をしばらく積むのも良い…のかも?

あ、もちろん、いつか超格好良い科学番組を作ると言う夢は今も持ち続けていますよ!


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COPD啓発プロジェクトに思うこと

COPD啓発プロジェクトの委員会に出席してきました。

COPDって何ですか?

と言う方がほとんどだと思いますので、ちょっとだけ解説しますと、世界の死亡原因の第4位、日本人男性の死亡原因の第7位と言う、とても大事な肺の病気なのですが、日本での認知率は20%ちょっと(詳しくは後述)しかありません。

これはまずい!と言うことで、今から約3年ほど前に、日本医師会、日本呼吸器学会、結核予防会、日本呼吸ケア・リハビリテーション学会が、COPDの発症予防や合併症防止などを目的に「日本COPD対策推進会議」を作りました。

その日本COPD対策推進会議の中で、産学連携によるCOPD啓発プロジェクトと言う組織があり、私のところで疾患啓発用のポスター及び全国テレビCMのCG部分を昨年担当させて頂きました。

今日の委員会で、日本医学会会長の髙久史麿先生や、GOLD日本委員会委員長の福地義之助先生などの前で発言させて頂く機会を頂いたのですが、割と評判が良かったのでここに書き留めておきます。

COPD啓発プロジェクト、と言う名前からしてわかるとおり、COPDと言う病気の名前だけでも認知率を上げようと努力しているのですが、努力のやり方に少し疑問を感じています(コンテンツ業界にいながらコンテンツ業界の批判をするわけですが。汗。)。

まずそもそもなのですが、COPDと言う名前を知っているかどうか、と言う認知率に関してなのですが、国はGOLD日本委員会と言うところが実施している統計データを公式のデータとして採用しています。

このデータがまず疑問

と言っても、ねつ造とかでっち上げとか、そう言う意味ではないです!

データの取り方に改善すべきところがあるのではないかなぁと思うのです。

まずは、GOLD日本委員会による、COPD認知度把握調査結果をご覧下さい。

http://www.gold-jac.jp/copd_facts_in_japan/copd_degree_of_recognition.html

こちらが、調査結果のグラフです(上記サイトより転載。問題あるようでしたら削除致します。)。

・COPD認知度(2013年12月調査)

graph_01_degree_of recognition_2013

インターネットによる10000人への調査なのですが、「COPDの名前は聞いたことがある」が21.4%あります。

インターネット調査では実際にこの数字だったのだとは思いますが、色々な講演会などでその場で手を挙げてもらうときと随分乖離があります。

例えば、とある大学で学生100人に対して「COPDの名前だけでも聞いたことある人~」と質問したとき、手を挙げた学生は0人でした。

恥ずかしがっているだけなのかもしれない、と思い、「ではAIDSの名前だけでも聞いたことある人~」と質問すると、ほぼ全員手を挙げましたので、本当に0人なのだと思います。

昨年、高校1年生、高校2年生約700人以上の前で話したときも、手を挙げたのは4人程度。

昨年、CGWORLDカンファレンスで100名以上のクリエーターの方の前でお話しさせて頂いたときも数人。

最初は私も公式の値と全然違うことおに驚いたのですが、色々なところで講演させて頂いて、再現性をもって認知率0~2%くらいだったので、こっちが実際の値なのではないかなぁ、と思うのです。

繰り返しますが、公式の値がねつ造とかでっち上げとか、そう言う話をしているのではなく、データの取り方に改善点があるのではないか、と言う話です。

そしてもう一つとても気になるのが、このGOLD日本委員会による調査の対象年齢、20代からなんです。なんで10代を調べないのでしょうか。

COPDは喫煙が最大の原因です。で、あれば、もちろん今現在喫煙されていてCOPDの危険性がある方に啓発するのも大事ですが、そもそも喫煙しないように10代に指導・啓発するのってとっても大事だと思うんですよね。それなのにアンケート調査から10代が除外されているのは残念です。

次。

記事の冒頭の写真に写っているCOPD啓発用のポスター

CG部分は私のところ(サイアメント)で担当させて頂いて、それなりに良い出来映えだと思っているのですが、このポスター、実は日本医師会のウェブサイトからダウンロード出来るようになっています。

日本医師会のウェブサイト↓
http://www.med.or.jp/

では皆さん、この日本医師会のウェブサイトのトップページから、COPD啓発用ポスターがダウンロード出来るところまで行ってみて下さい!!

たぶん、誰も辿り着けないと思いますw

正解はこちら↓
http://www.med.or.jp/people/nonsmoking/copd.html

わかりませんねー。

さて、では上記正解ページのどこからダウンロード出来るでしょうか?

たぶん、一発では正しいリンクにたどり着けないと思いますw

正解は、

「啓発ポスター」
COPDをご存知ですか?【H.25.8.20】PDF(401KB)NEW

となっているところです。

こんなにわかりにくいところにあったら、せっかくの素敵なポスターでも誰も見てくれませんねw

問題点はおそらく2つで、

・日本医師会のトップページから辿り着くのがほぼ不可能。
・ポスターの広報なのに、該当ページにサムネイル画像すら無く、文字リンクがあるだけ。

の2つ。

たくさんの人にポスター見てもらいたいのにサムネイル画像も無い、とか致命的だと思うのです。ウェブサイトで画像貼るとか、全く難しくありません。レイアウトを考慮しなければ5分で終わります。5分で終わることをやっていないことで、どれだけ損失があるのか、もうちょっと考えて欲しいなと思います。

次。

COPD啓発プロジェクトの公式ウェブサイトなるものが実はあります。

COPD啓発プロジェクト公式ウェブサイト↓
http://copd-project.net/

COPD啓発プロジェクトのポスターやCMでCOPDに関心を持ったら、当然、ネットで調べますよね。検索ワードはまず間違いなく「COPD」でしょう。

「COPD」でググってみましょう。

あれ、COPD啓発プロジェクトのウェブサイトが出てこないw

もうちょっと調べましょう。

20番目w (2014年2月21日現在)

COPDweb

20番目のウェブサイトとか、誰が見るんでしょうか。誰も見ません。SEO対策は結構大変な部分もありますが、もう少し何とか工夫して頂きたいところです。せいぜい上位5件くらいまでに入ってないと、本当に誰も見ないと思うのです。

次。

このウェブサイトの中身。アドレスを再掲します。

COPD啓発プロジェクト公式ウェブサイト↓
http://copd-project.net/

中身を見てみてください。

あれ、ポスターがどこにも載っていないw

これは何かもう、致命的と言いますか何と言いますか、マーケティング的なことを根本的に考え直さないといけないと思うのです。

せっかく良い素材があるのに全く活かされていない。先ほどの、日本医師会の超わかりにくいところにポツンと置いてあるだけ。せっかく一生懸命CG作ったのに。。。

そして、昨年作ったCMも掲載されていません

まぁCM掲載に関しては、モデルさんを使っている場合の利用範囲の問題だとか色々とあるかと思いますので、CM掲載出来ない理由があるのであれば、これについては何も文句はありません。

ただ…。

昨年、私のところで、CMのCG部分をより正確でリアルなものに作り替えさせて頂いたのですが、実はYouTubeで検索すると、一昨年の、作り替える前のものがヒットしたりします。しかも、製薬会社さんの公式チャネルに(敢えてアドレスは載せません)。

一昨年のCG部分で正確性などに問題があるので昨年作り直したのに、作り直す前のものが未だにウェブ上に残っているのは、それだけも問題ですが、昨年のポスターやCMをきっかけにこの一昨年のCMに辿り着いてしまったとしたら、間違った情報を与えることになり余計に罪深いです。

そして、ネットによる拡散力を期待したいのであれば、ソーシャルプラグインくらい付けておくべきなんじゃないかなぁとも思うのです。ツイートとかFacebookで簡単にシェア出来るように。これだって、とりあえずデザイン無視すれば15分くらいあれば出来ちゃいますから。なんでこんなちょっとしたことをやらなんだろう。。。

次(最後)。

この疾患啓発ポスターは、COPD啓発プロジェクトが産学連携のプロジェクトと言うこともあり、各製薬会社のMRさんや日本医師会を通じて、診療所や病院に配布されたのですが、それはそれで大事なのですが、一番必要としているところはそこじゃないと思うのです。

昨年、このポスターが解禁されたとき、僕は自分のFacebookで「ポスター出来ましたー」と宣伝したのですが、真っ先に連絡を下さった知り合いが2人いました。産業保健師さんでした。

そうなのです。病院や診療所に啓発ポスターを貼ったところで、病院や診療所に足を運ばなければポスターを見ることは出来ません。

普段病院や診療所に行かない人に対して啓発をしたいのであれば、企業の連絡板とか辞令が貼り出されるところとか、みんなが通る社員用通路とか、そう言うところにこそ貼るべきなのです。

実際、色々なところに打ち合わせをしに伺わせて頂いて、このポスターをお見せすると、早速次の日から貼りだして下さったところもありました。

産業保健師さんにとって、どうやって禁煙を促すのかはとても大事な問題です。

このポスターは、禁煙を促す力も秘めていると思います。但し、その力が最も発揮されるところに全く届いていないので、宝の持ち腐れになってしまっています。

…ふう、色々書きすぎてしまった。SEO対策はちょっと大変かもしれませんが、それ以外は全く難しくないはずです。お金もそんなにかからないはずです。って言うか、HTMLちょっとだけいじるとか、ウェブの知識が少しあれば誰でも出来ます(デザイン要素を入れるだとか、セキュリティチェックとかの問題はあるかと思います)。

ちなみに僕は、ポスターとCMの一部分を作った制作会社と言う立場です。いわゆる「業者」の人です。それも非常に規模の小さい業者です。そんな業者の人がこんなことをつらつら書いたら次から仕事が来なくなるんじゃないかと言う気もしなくもないですが、でもまぁ去年まで2年間だけですがお医者さんをやっていた人として、これで少しでも皆さんがCOPDに関心を持って下さったり、話題になれば嬉しいです。

# 広告代理店のプランナーとかになれないかなw
# こんな感じで、簡単に出来るのに意外と誰もやってないことを指摘して良くしていくのも仕事になったらだいぶ助かるんだけどな…。


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