アメリカの新聞広告に医療系の凄すぎるミスが載っていたのだけれども、そこから来ている批判が何か違う。

先日、アメリカのNew York Tiemsをはじめとする新聞の一面に掲載された広告が、かなり凄いことになっていて一部でだいぶ盛り上がりました。

見る人が見ればわかるのですが、これはかなりヤバイ。

別にこれは万人が知らなければいけない常識だとは思っていないので、普通はわからなくても特に何も問題はないのですが、この手の仕事をしたいのであれば完全にNG。

で、まぁこう言うことがあると、当事国でありメディカルイラストレーション(Medical Illustration)の本場であるアメリカでも、当然メディカルイラストレーター(Medical Illustrator)の間で盛り上がっておりまして。

ただ、その批判がちょっとずれている気がしてなりません。

北米のMedical Illustratorの協会であるAMI (Association of Medical Illustrators, http://ami.org/)は早速声明を出していました。

Forward-Thinking: Hiring a Medical Illustrator
http://ami.org/press/press-releases/2015/342-forward-thinking-hiring-medical-illustrator

なんと科学雑誌Scientific Americanのブログでも同じようなことが書かれています。

OOPS! Basic Anatomy Wrong in National Campaign Announcing $50m Gift
http://blogs.scientificamerican.com/symbiartic/2015/04/02/oops-basic-anatomy-wrong-in-national-campaign-announcing-50m-gift/

どちらも、

「私たちプロのメディカルイラストレーターを雇っていれば、こんなことにはならなかっただろうに。」

みたいなことが書かれているのですが、いやまぁ確かにそれはそうかもしれませんが、メディカルイラストレーターの価値ってそこなのかなぁ、と。

こんなの高度な医学知識でも何でもなく、確認しようとするかどうかだけの問題です。中身をきちんと理解してから作業に取りかかるちゃんとしたデザイナーさんならみんな当たり前にやることですから。

或いは、たまたま色んなチェックを全てすり抜けてしまったと言う不運な例に過ぎないかもしれません。

じゃあ高度な医学知識が必要な(広義の)メディカルイラストレーションって何よ?

ってことになるわけですけれども、例えば、8時間の手術で術野を最初から最後まで撮影した実写映像があって、「これを学会用に文字の説明なども格好良く出しながら2分にまとめておいて。」みたいな案件があったとします。

(いまや映像の切り貼りだけだったら研修医の仕事だったりもするので、タイポグラフィー、モーショングラフィックスとかも含めて格好良く編集しなければいけない、とします。)

これなんかは、どんなに編集やモーショングラフィックスが神がかっている人でも、知識が無ければ何も出来ないわけです。

何もわからないと、開創とか閉創とかも結構大事だと思ってしまってやたら尺使っちゃったりするじゃないですか。

最初と最後だけ数秒映っていれば十分だろ、みたいな。

「いやぁ、やっぱりここ見たいよねぇ(ニヤリ)」

みたいなところを、言われなくても、或いはちょっと説明されれば後は自分で理解して仕上げられるかどうか、と言うのが、「高度な医学知識」を持つ(広義の)メディカルイラストレーターに求められるものだと思います。

※「広義の」と言っているのは、メディカルイラストレーターって言うと絵を書く人だと思われがちですが、実際には北米のメディカルイラストレーションの学科を卒業した人たちでも映像編集だったりウェブサイト制作だったりを作ったりもしていて、医療系のコンテンツを作る人全般をメディカルイラストレーターと呼んでいる印象が強いからです。


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退職をしないご報告

何だか周りで「退職のご報告」をする人が多いので、「退職をしないご報告」をしてみる。

私は本日3/31を以て、株式会社サイアメントを退職、しません。

寧ろ4/1からますますパワーアップしてサイアメントを続けます。

何だかんだで今年も潰れずに生き残ることが出来ました(これ超大事)。
自分の生活費も、同期で外勤もやっている医者友達には遠く及びませんが、何とか確保出来ております。

この1年間も色々な方とお会いして、色々な機会を頂きました。
会社的にも結構様々な変化がありました。

自分の力である程度作業を行えるスキルアップが出来たのはとても大きかったです。

とか書くと、「社長は作業するんじゃなくて、出来るだけ他の人にやらせて会社を大きくすることを考えろ。」とか言われそうですが、そう言う人たちは自分で会社やったことが無いスタートアップ界隈()の人か、或いは言うタイミングが早いのだと思うようになりました。

作業を他の人に任せるのは、ある程度会社が大きくなってきてからの話で、或いは純粋に「社長業」をしたい人がやれば良いことであって、初期の頃は自分でやるのが当たり前なのです。

自分である程度出来るようになることで、作業に対して肌感覚で「これは難しい」とか「見積高すぎだろ。こんなかかんねーよ!」とか逆に「えっ!ここまでやって下さったんですか!」みたいなことがわかるようになります。

そのあたりを理解出来てはじめて、「ものを作り上げる」ことが出来るようになる、と言うのを身を以て感じた年でした。

実際、会社をとても大きくされた方でも、初期の頃は自分が全部やっていた、と言う方にとても多く会いました(私がフィルターをかけている可能性はだいぶありますが)。

それから、これまでは「今すぐに、やること1つに絞って他は捨てて大型の資金調達しろ。」みたいなことを言う方が割と多かったのですが、この1年は、会社を大きくされた方やVC界隈の方であっても、いまの自分がやっているようなスモールビジネス的な考え方を支持して下さったりアドバイスして下さる方に出会えたのがとても良かったです。

自分の中では結構新しいことにも挑戦していて、これでもリスクを取っているのですが、「リスクを取る = 投資でお金突っ込んで人を入れる」みたいな雰囲気を感じる場面も未だに多く、私は石橋を突いて、と言いますか、突きまくって少しずつ、でも確実に成長すると言うパターンのほうが好きなので、今後もその方針で進むのではないかと思います(とか言って来年の今頃には全く正反対のことを言っているかもしれませんがw)。

明日からも面白いことやるぞー。


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