日本国内で一部蔓延っているOsiriX万能論が危険過ぎると思った件。

第21回日本形成外科手術手技学会にて、特別講演「3DCGは医療に本当に役立つのか?ただ格好良いだけではないのか?」を行ってきましたー!

埼玉医科大学総合医療センター形成外科・美容外科教授の三鍋俊春先生が今回の学会の会長をされていらっしゃったのですが、そこで講師をされている大西文夫先生が筑駒の大先輩!という繋がりで、いままで形成外科はほとんど関わったことが無いにもかかわらず、50分間もの特別講演枠を頂くことが出来ました。感謝感激です。

先生方の前で感謝状まで頂いてしまいました!

さらにバレンタインデー前日、とのことで、学会からのお土産としてチョコレートまでも頂けたという何とも粋な計らい!

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さてさて、講演内容に直結することなのですが、3DCGはけっして万能ではなく、魔法の技術でもありません

医者が一番知りたい立体情報は何なのか、どこまでの精度が欲しいのか、変形などの動きは必要なのか、患者さん個々のものが欲しいのか、それとも代表例で十分なのか、など、様々な条件があり、条件によって3DCGが真価を発揮することもあれば、残念ながら技術的に難しいこともあります

特別講演では、そのあたりを具体例を挙げながらお話させて頂きました!

んで、ここからが問題提起と言いますか、苦言と言いますか。

今日の講演後にも何人か先生方に声をかけて頂いたのですが、日本の外科系の先生方の間で一部蔓延っている「OsiriX万能論」は何とかしなければいけないと思います

いや、別にOsiriXが使えないソフトウェアというわけでは全く無いのですが、OsiriXは優秀なDICOMビューアーであって、最近では任意の曲面での断面も表示できるようになっているようですが、CTからの臓器抽出や3DCGモデル作成用のソフトウェアではありません

3Dプリンタ出力時に一般的に使われているSTL形式でのデータ出力は出来ますが、それは文字通り「STL形式でデータ出力が出来る機能を持っている」というだけでして、臓器抽出や3DCGモデル作成が不完全であれば、不完全なままのSTLデータが掃き出されます

そして、3Dプリンタ出力に適したSTLデータをOsiriXだけで作るのはメチャクチャ難しいです。仮に骨など単純な手法でも抽出しやすいものに関してOsiriXで抽出出来たとしても、メッシュを作るときに孤立点を除去するとか、穴埋めするとか、綺麗な流れにするとか、OsiriXではそこまで出来ません

…ってのはOsiriXの開発者や、それなりに詳しい方々なら当たり前にわかっているはずで、おそらくOsiriXの開発者たちもそんな使い方は想定されていない…と思うのですが、それなのに臓器3DCGモデル作成(…からの3Dプリンタ出力が主だと思いますが)に関してOsiriX万能を謳う人がいたら、それはもうだいぶ罪深いと言いますか、詐欺だと思うのです

いやー、普段から思っていることを遂に書いてしまった。今日の講演が良いきっかけになりました。すっきりしたw

講演では、バリバリの医学系の学会でUnreal Engineのリアルタイムデモも、Unityのリアルタイムデモも、どちらも提示させて頂くという、あまり過去に例がないであろう試みも出来ましたー!

これをきっかけに形成外科領域でも何か3DCGが役立つことがあれば取り組めると良いなぁ。

素敵な機会を本当にありがとうございました!


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日本国内で一部蔓延っているOsiriX万能論が危険過ぎると思った件。 への1件のフィードバック

  1. Horos 愛用者 のコメント:

    明快な説明、大変興味深く読まさせてもらいました。

    OsiriX を3Dモデルと絡めて宣伝なさっている先生、ソースコードレベルでは、OsiriX とは何の関係もないですよね。
    https://github.com/pixmeo/osirix/graphs/contributors

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