将来の夢を探している中学生の皆さんへ

今日は、グランフロント大阪ナレッジキャピタルのイベントで、甲陽学院中学校の中学3年生の有志の皆さんにプチ講演&東大情報学環で特任助教をされていらっしゃる安斎勇樹さんのファシリテーションでのグループワークを行ってきました。

講演前に、事前に中学3年生の生徒さんたちにメッセージを書いておいたのですが、せっかくなので貼り付けておきます。
参考になるかならないかわかりませんが…。

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将来の夢を探している中学生の皆さんへ
瀬尾拡史

先生や家族から「自分のやりたいことを早く見つけなさい。」「将来どうなりたいの?」と聞かれたり、或いは中高一貫校に在学していれば、高校生の先輩方の姿を見て自分の将来について考えたりすることもあるでしょう。

「そんなこと言われてもまだわかんねーよ!」という方も多いと思います。「考えてるけどやりたいことがなかなか見つからずに不安だ…」という方もいるでしょう。

大丈夫です。中学生の間にやりたいことが見つかるなんて、そっちのほうが稀です。中学生に対してやりたいことを見つけさせようとするほうが寧ろ酷だと思っています。

自分のやりたいことなんて、考えたからって見つかるものではないのです。
見つかる方法は、2つしかないと思っています。

1つは、ある日突然一目惚れのように出会う場合。いわゆる運命ってやつです。
もう1つは、好きなことも嫌いなことも含めて、目の前のことを一生懸命やっているうちに自分自身のことを理解出来るようになってきて、知らない間に何かに導かれていくパターン。

賢い頭で考えたところで、やりたことが答えとして見つかるなんてことはないと思います。

私の場合は、小さい頃から両親に算数・数学(…と言っても高校1, 2年生くらいの範囲までですが)を教えてもらって好きになって(目の前のことを一生懸命やったら好きになった!)、中学生のときにパソコン部に入ったらとても楽しくて、難しい部分も勉強出来て(目の前のことを一生懸命やったら好きになった!)、そんな中学2年生の春に、パソコン部内で0から3DCGをプログラミングしよう、ということになって(運命ですね!)、そのときに算数・数学の知識がとても役立ったのと、たまたま同級生に国際数学オリンピック最多出場記録を持つ友達がいて(運命ですね!)、その彼が3DCGプログラミングに必要な数学の教科書を中学2年生で作ってくれて、そしてちょうど同じ年にたまたまテレビで「NHK驚異の小宇宙・人体III 遺伝子・DNA」という、3DCGがフル活用されている番組を見て(運命ですね!)、

「これだぁぁぁぁぁ!!」

と思って今に至ります。

時期はたまたま中学生で、私の場合はとても早かったと思いますが、時期が早い遅いは関係ありません。

先ほど、自分のやりたことが見つかる方法は2つ、と言いましたが、実際には私自身の例のように2つの合わせ技です。

そして、一目惚れパターンは本当に運命としか言いようがありませんが、もう1つのパターンは自分自身の努力でいくらでも手に入れることが出来ます。

運命として国際数学オリンピック最多出場記録保持者が同級生にいたところで、もし自分が親から算数・数学を教えてもらっていなかったとしたら、おそらく前提知識が無さ過ぎて3DCGに必要な数学は理解できなかったでしょうし、ある程度プログラミングを勉強していなかったら、いくら3DCGに必要な数学の理解が出来ていたって、実際にプログラムを書くことは出来なかったでしょう。

 
そんなわけで、いざ自分が運命的なものに出会ったときに、実際にそれを運命に出来るように準備しておくことが何よりも大事で、そのためには、自分の好きなことはもちろん、嫌いなことでも目の前に課せられたことをとりあえず一生懸命やって、たくさんの知識と経験を付けて、少しでも良い環境に自分の身を置いておくしかないのです。

環境というのもとても大事で、私は筑駒出身なわけですが、筑駒でなければ数学の彼に出会うこともなかったでしょう。

いまの私自身も、東大という環境にいたからこそここまで来ることが出来ました。東大だったからこそ医学×3DCGを学生時代から取り組むことが出来たし、短期留学だって出来ました。

やりたことが見つかったときに、教えてくれる優秀な人材がすぐ近くにいるかとか、最新の実験設備が揃っているかとか、素晴らしく整備されたグラウンドがあるかとか、そういう「環境」に自分の身を置いているかもとても大事なのです。

中学生のみなさんの場合、目の前に課せられたこととは、即ち、勉強です。
日本の学校教育に賛否両論があることは私も何となく知っていますが、まぁそんなこと言っても、偉い大人たちがものすごい時間をかけて、「君たち将来どの道に行くにしたって、これくらいは勉強しておきなさいよ。」と思って定めたものです。ここでいう将来というのは、何も学術的なものだけではありません。芸能人だって良いしスポーツ選手だって良いしお花屋さんだって良いのです。

習ったことのほとんどは大人になって使うことが無いのですが、でも、運命的なものが自分の目の前に現れたときに、過去の知識や経験がメチャメチャ蘇ってきて、自分の将来を決定付けるのです。

「やりたいこととか将来とか実感もわかないし全然わかんねーよ。」と思ったら、それが普通です。そして、その次にやるべきことは、いつ現れるかわからない運命に遭遇したときに、それを運命に確実に出来るように、好きなことも嫌いなことも含めて、目の前のことをとりあえず一生懸命やって、少しでも良い環境に身を置けるように努力すること、だと私は思っています。

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