「医療を良くする」ってなんなのか?

今日7/4は、初めての講演ダブルヘッダーでした。

お昼、13:05~14:30までは、日本橋ライフサイエンスビルディングにて行われた、医学部生主体の企画、
第1回 日本橋メディカル・イノベーターズ・サミット」の
Session1 「アート×医療 ~アートで医療を変える~」
http://mis.tokyo/

に、チームラボの猪子氏、佐賀大医学部6年生でViVi専属読者モデルの奥田晃子さん、そして奥田さんの弟で九州大学医学部2年の奥田一貴さんとともにディスカッションをしました。

そして夜、18:20~19:20までは、
昨年福島で開催された臨床外科学会でお会いした、千葉県外科医会会長の佐藤裕俊先生のご厚意で、
第74回千葉県外科医会~見て学ぶ外科の手術手技~」にて
医療、医学に3Dのノウハウをもっと導入しよう -総務省「異能vation」事業(2014年)に本採択されて-

と言う特別講演を、外科医を中心とした先生方の前でさせて頂きました。

見た目にはどちらも「医」なのですが、お昼と夜とで聴衆の雰囲気も話の方向性も本当に全然違って、それを1日で両方体験したのが面白かったので書き留めておきます。
Twitterでも連続投稿しましたが、さらに補足なども入れて書いてみます。

まずはお昼の「アート×医療 ~アートで医療を変える~」
まぁ、これは、うーん、あれです。良くも悪くもほぼほぼ予想していた通りのセッションになりました。

私はUT-Heart映像制作を通して、色々な領域のことを網羅的に知っていないと、医療を変えるなんて出来ないのではないか、と言うことと、自分がやっているのはアートではなくて、問題解決の手段としてCGを用いる、デザインをやっているつもり、と言う話をしました。

たまには講演スライドをアップロードしてみます。こんな感じの話をしました。

超ざっくりですが、アートと言うのは自己表現であったり、新しい何かを制作者が自分の考えで提示して問いかける類のものだと思っていて、それがたまたま特定の誰かに刺されば何かが変わることもあるのかなぁ、と言うのが私の認識。

次の奥田姉弟は、一言でまとめると、病室に自作のプラネタリウムを作ったら患者さんが喜んでくれました、こういうの良いですよね、と言うお話がまず1つ。
はい、まぁ、若いんだし、それで喜んでくれる方がいるならやってみれば良いのではないかと。

(でもそれ医学部生がやるべきことなのか?)

↑と、言う人が必ず出てくると思うんですけれども、これ実は結構盲点があると思っていて、確かに医学部生ではなくても出来ることであって、やりたい人がいたら誰でもやってみれば良いんじゃないの?的な考え方もあるののですが、実際には医学部生じゃないとなかなか難しいんじゃないかなぁ、と思うわけです。
そもそも病院実習中の学生くらいしか、学生が病院内を歩き回れる機会がありません。
医学部生で病院実習をしていて、やるべき課題とかをやった上で、「勝手に」「+αで」やってみる、くらいしか、すぐに行動に移せる方法は無いんじゃないかなぁ、と思います。
と、言うわけなので、やってみたことは素晴らしいと思います。

猪子さんの話は、隣で聞いていましたが何を仰りたいのかよくわかりませんでした。
でもこれは猪子さんがちょっとかわいそうだった気もします。
だって医療については全然専門でも何でもないし。
チームラボが作り出す(目立っている)作品は、「アート」であると言うことだけはわかりました。

ビッグデータがあると相関があることはわかるけれども人間が理解できる形での因果関係を説明できない時代がくるでしょう、みたいなよくある話にも聞こえたし、でも予防の話をしているようにも聞こえました。

収穫だったのは、チームラボが作ったTeamLab Bodyと言うアプリがあって、これは阪大の整形外科の先生が長年蓄積されてきたデータをもとに作った「3D解剖書」と言うことになっているのですが、「これ、誰向けに作ったんですか?」と直接聞いたら、「解剖アトラスを買う人向け」と答えられていたのですが、どう使うのかは「買った人が決める」と言うスタンスだったこと。

「では、それって図鑑みたいなものですか?」と聞いたら「そうです。」と。

ただですね、「図鑑」って言うのは、網羅的に色々なものが載っているわけで、TeamLab Bodyであれば「骨の動きの図鑑」なのだと思いますが、じゃあ例えば植物の図鑑を作るとして、植物の写真をたくさん撮っていって、ただそのまま撮った順番に並べたら図鑑になるかって言ったら絶対にならないわけですよ。春に咲く花、とか、イネ科の植物、とか、いくら網羅的とは言ってもある程度の分類がなければ図鑑にはなりません。
データを見えるようにしただけ(骨の動きを3DCGモデルで表現しただけ)と言うのは、それはつまりデータを並べただけに過ぎず、図鑑にはなっていません。
で、分類どうするの?みたいなことをどれだけちゃんと出来るか、それが大事なわけで、「なかなか売れない」のであれば、まぁもちろん見た目の体裁とかもあるかとは思いますが、それ以前に最低限の適切な分類がなされていない、のかもしれません。
いくら使い方はユーザー次第、とは言っても、本当にユーザー任せでデータだけがある状態では使いにくくてしょうがない。
解剖アトラスで勉強する学生だったら、こう言う分類は絶対に欲しい、みたいなところをクリアしないと。

と、まぁ、そんな感じで、バックグラウンドや経験分野が違い過ぎて、あまり話が噛み合わないセッションでした。
でも、一般の方が思い描いている「みんなで医療を良くしよう!」的なものは、こんな感じなのかもしれない、とも思いました。

と言いますか、

「アート×医療 ~アートで医療を変える~」

と言うタイトルを見た方が、どんなことを想像されてこのセッションに参加されていたのかが最後まで想像出来ませんでした。誰か教えてください。

一番話が噛み合ったていたと思っているのが、イベント前に企画者と対談したこれなんですが↓

でも改めて「このテーマに取り組もうと思ったきっかけはありますか。」のあたりを読んでみると、企画側の想いを最も汲み取れていなかったのが自分だったのかもしれないとも思えてきました。

あら、1つめのイベントだけでこんなに書いてしまった。

一方、夜の
医療、医学に3Dのノウハウをもっと導入しよう -総務省「異能vation」事業(2014年)に本採択されて-
は、同じ「医」でもこんなにも違うのか、と言うくらい本当に全然違う雰囲気でした。

こちらは畏れ多くも対象のほとんどが大ベテランの外科医の先生方と言うこともあって、昼のスライドとは全く異なり、もうちょっと何とかなれば臨床現場でも何かしらの役に立てる…かもしれない、と思っていることをお話しさせて頂きました。

自分が学生時代に取り組んでいた、裁判員制度での3DCGの活用の話から初めて、少しでも外科の先生方から何か示唆を頂ければと思い、リアルタイム性を重視して取り組んだor取り組んでいる、気管支、心臓、肝臓について、どれもまだ未完成のものではあるのですが提示させて頂きました。

いずれも、各分野の先生方からの提案、つまりは現場の声がベースにあって、自分の初期研修時代の実感と重なる部分も多くあり、一旦自分の頭で解釈をして、「3DCGを活用してこんなことをすれば、もしかしたら学生や研修医のトレーニングに使えたり、ミスが減ったり、手技施行時間が短くなったりするのではないか。」と思って作ったor作っているもの。

まだ有効性も何も示されていないものを提示して叱られるだけではないかと思っていたのですが、本当に暖かいコメントやアドバイスをたくさん頂けて、とても嬉しかったです。

本当に3DCGを現場でフル活用しようと思うと、患者さんそれぞれの医用画像から個別の臓器3DCGモデルを作る必要があったり、臓器の動きのシミュレーションを行う必要があったりもして、そしてそれが今でも一番のボトルネックで難しいところだったりもするのですが、「典型的なもの」があるだけでも役に立つ世界、と言うのも、先生方とよーく話をしてみるとわかってきたりもして、つまりは、よーく話をしてみてようやくわかってくるレベルのものなのですが、そのあたりをふまえた上でアドバイスを頂けたのはとても嬉しかったです。

お医者さんは企業の人には抵抗があるものだと常々思っていたのですが、こんなに受け入れて頂けて、自分は本当に幸せ者だなぁ、と。

やっぱり、2年間だけでも初期研修をやったことは他には変えられないなぁ、今後、臨床の先生方の協力のもとで、臨床的に意味があるものを世に出していきたいなぁ、と改めて感じました。

医者としての経験が長くなれば長くなるほど、普段専門性を持って先生方が行っていることそのものを少しでも効率よくしたり、精度を上げたりすることに医者の関心は傾いていくわけで、そのあたりが、まだ臨床経験の無い医学部生だったり、或いは非医療従事者とが思い描いている「医療の向上」とのギャップの根本なのかな、と思いました。それが良いとか悪いとか、そう言うことではなく。

実にまとまっていないなぁ、この文章。


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