先日、アメリカのNew York Tiemsをはじめとする新聞の一面に掲載された広告が、かなり凄いことになっていて一部でだいぶ盛り上がりました。
Full page #newyorktimes ad for @USC $50M brain imaging institute. Good job USC for looking forward. I mean backward. pic.twitter.com/kmjUXukZ1F
— Mike Yassa (@mike_yassa) 2015, 4月 1
見る人が見ればわかるのですが、これはかなりヤバイ。
別にこれは万人が知らなければいけない常識だとは思っていないので、普通はわからなくても特に何も問題はないのですが、この手の仕事をしたいのであれば完全にNG。
で、まぁこう言うことがあると、当事国でありメディカルイラストレーション(Medical Illustration)の本場であるアメリカでも、当然メディカルイラストレーター(Medical Illustrator)の間で盛り上がっておりまして。
ただ、その批判がちょっとずれている気がしてなりません。
北米のMedical Illustratorの協会であるAMI (Association of Medical Illustrators, http://ami.org/)は早速声明を出していました。
Forward-Thinking: Hiring a Medical Illustrator
http://ami.org/press/press-releases/2015/342-forward-thinking-hiring-medical-illustrator
なんと科学雑誌Scientific Americanのブログでも同じようなことが書かれています。
OOPS! Basic Anatomy Wrong in National Campaign Announcing $50m Gift
http://blogs.scientificamerican.com/symbiartic/2015/04/02/oops-basic-anatomy-wrong-in-national-campaign-announcing-50m-gift/
どちらも、
「私たちプロのメディカルイラストレーターを雇っていれば、こんなことにはならなかっただろうに。」
みたいなことが書かれているのですが、いやまぁ確かにそれはそうかもしれませんが、メディカルイラストレーターの価値ってそこなのかなぁ、と。
こんなの高度な医学知識でも何でもなく、確認しようとするかどうかだけの問題です。中身をきちんと理解してから作業に取りかかるちゃんとしたデザイナーさんならみんな当たり前にやることですから。
或いは、たまたま色んなチェックを全てすり抜けてしまったと言う不運な例に過ぎないかもしれません。
じゃあ高度な医学知識が必要な(広義の)メディカルイラストレーションって何よ?
ってことになるわけですけれども、例えば、8時間の手術で術野を最初から最後まで撮影した実写映像があって、「これを学会用に文字の説明なども格好良く出しながら2分にまとめておいて。」みたいな案件があったとします。
(いまや映像の切り貼りだけだったら研修医の仕事だったりもするので、タイポグラフィー、モーショングラフィックスとかも含めて格好良く編集しなければいけない、とします。)
これなんかは、どんなに編集やモーショングラフィックスが神がかっている人でも、知識が無ければ何も出来ないわけです。
何もわからないと、開創とか閉創とかも結構大事だと思ってしまってやたら尺使っちゃったりするじゃないですか。
最初と最後だけ数秒映っていれば十分だろ、みたいな。
「いやぁ、やっぱりここ見たいよねぇ(ニヤリ)」
みたいなところを、言われなくても、或いはちょっと説明されれば後は自分で理解して仕上げられるかどうか、と言うのが、「高度な医学知識」を持つ(広義の)メディカルイラストレーターに求められるものだと思います。
※「広義の」と言っているのは、メディカルイラストレーターって言うと絵を書く人だと思われがちですが、実際には北米のメディカルイラストレーションの学科を卒業した人たちでも映像編集だったりウェブサイト制作だったりを作ったりもしていて、医療系のコンテンツを作る人全般をメディカルイラストレーターと呼んでいる印象が強いからです。