無難な医者と言う生き方

国際医学生連盟日本(IFMSA-Japan)第12回日本総会にて、本日、基調講演「医学 + αで出来ることってあるの?」をさせて頂きました。

僕の講演の後に、こんな質問がありました。

「瀬尾さんは早い時期からCGと言う目標があったと思いますが、私にはまだそれが見つかっておらず、このままだと無難に医者をやることになるかもしれないのですが、どうやって目標のようなものを見つければ良いのでしょうか。」(だいたいこんなニュアンスだったはず)

初期研修2年しかやっていない僕がこの質問に答えるなんて無礼千万ですけれども、Twitter, Facebookに僕なりの回答を書き記したところ少し反響があったので、こちらでもまとめ&さらにちょっとだけ補足しておきます。

無難な医者と言う生き方のどこが悪いのでしょうか。なぜそこで悩まなければいけないのでしょうか。「無難」と言うとネガティブに聞こえるかもしれませんが、「標準的なことがきちんと出来る」ってことですよ。それってめちゃくちゃ大変で、素晴らしいことだと思うのですが。

僕なんか、初期研修2年しかやっていません。無難な診察とか無難な治療とか全然出来ません。無難に出来る先生って本当に凄いと思います。「無難に出来る」お医者さんになるのに一体何年かかるのでしょうか。相当時間がかかると思います。

たぶんそれって、標準治療はたいしたことなくて、先端医療は凄いんだ、みたいに世の中で誤解されているのと同じ類の誤解だと思うんですよね。「標準治療ってのは現在のところこれが最も良いだろうと誰もが認める治療」って医学部時代に言われたのをよく覚えています。

無難なお医者さんって言うのは、僕の考えでは「標準的な医療をいつでもきちんと提供できるお医者さん」のことで、これって超大変です。それぞれの専門の科では、少なくとも専門医取得が最低限なのではないでしょうか。簿偉そうに言ってますが僕自身は到底無理です。

だから、イノベーション起こそうぜとか言って行動する方が無難に医者やるよりもずっと素敵みたいな考え方は全く以ておかしいと思います。僕の場合は、たまたま自分の中で最も力を発揮出来ると思っていることが標準、無難から外れているだけで、「外れ値」ってやつですよ。

ただ、無難、標準から外れた方が個として目立つし、注目もされやすく、メディアに取り上げられるなどして有名になりやすいのは事実です。そうやって広く世間で知られるようになることで、今まで全く関わりを持てなかった人たちとの人脈が出来たりするのは確かです。

本当は、無難、標準のことをきちんとやっている人が世の中をしっかり支えているのに、そのような方々はメディアなどで取り上げられることは少ないです。こればかりはどうしようもないです。まぁでも幅広く知られるかどうかの違いくらいかなぁ、と。

あともしあるとすれば、本当にイノベーション起こしたらミリオネアになれるかも、くらいですかね。

あ、あと、あれか、目標が見つかるとして、見つかる時期が早いほうが色々動きやすいと言うのは事実だと思います。歳を取るに連れていろんな制約が出てきますから。でもいつ見つかるか、そもそも見つかるかなんて誰にも分からないし、そんなので悩んでも意味無い気がします。

目標が見つからなくて、結局無難な医者になる、と言うネガティブな意味だとしたら、そもそもの仮定がたぶん間違っています。目標が見つからないことは別に悪いことではないような気がします。って言うか、目標が見つかるまでは標準的なことをきちんと出来る無難な医者を目標にすれば良いのだと思います。目の前にあるやるべきことをしっかりこなして「一流の無難」になれば、それ以外の目標が例え見つからなかったとしても振り返ったときに十分尖った立派な一流です。

僕自身も、CGと言う目標がある…ように見えて、確かにその意味ではわかりやすいかもしれませんが、でもそのCGをどう活かすか、どのような方向に持っていくかと言う点ではまだかなりフラフラしていますし、悩みも多いです。

まぁでも結局そんなのなるようにしかならないと思っているので、道がはっきりと見えてくるまで歩き続けるしかありません。結局いつまでもはっきり見えずに終わりを迎えてしまうかもしれませんが、それはそれでそう言う結果なんだと考えるしかないです。

ちなみに僕は、輝かしく実績を作って成功を収めているように見えてしまうこともあるようですが、全然そんなことないですよ。何となくようやく霧が開けてきた…かもしれない…かな…くらいです。でもまたすぐに霧だらけになるかもしれません。

長くなってしまった…。無難なお医者さんになるってメチャクチャ大変だと思いますし、結果として無難になったとしても、それはそれで素晴らしい道だと思いますよ。


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